都心の交通連続ミニフォーラム第10回
「都市財政と交通」報告書
主催:LRTさっぽろ

10月30日(木) 18:30〜20:30 ホテルポールスター札幌(北4西6)


第1部 基調講演   第2部パネルディスカッション

都市財政の問題点(全文)
宮脇 淳
(北海道大学大学院法学研究科 教授)

札幌市の財政が,全体として大きな転機に来ている。社会学では,「財政とは,数字に凝縮された住民の運命である」と定義されているように,財政を議論しないということは自分達で将来の運命を放棄しているに等しいということになる。
資源投入の限界
これまでは,戦右肩上がりで所得が増えることを
前提にして,拡大する経済に税金をかければ入って来た。人口が減って経済が小さくなり,高齢化が進んで,税収が減少するということが,今後都市部に急激に起こる。財政危機の中で,公共が進めてきた事業が破綻をするという構造変化に,人口減少,高齢化,少子化という要素が入り,税収に変化が現れている。それは単に景気だけの問題ではない。
信用力の限界
借金の方は信用力の限界ということがある。例えば札幌市にお金を貸す場合(市債),札幌市自体は大きな赤字を抱えているが,破綻をしても今すぐ問題が起こるわけではない。しかし,自治体の信用力は落ちてきているので,信用性リスクは非常に大きな問題になっている。確保できる資金は限界にきている。都市部では今後この現象が急激に起こる。
社会の構造変化と対応(増分主義と減分主義)
札幌はまだ人口が伸びているが,2020年頃をピークに減少してくる。戦後では右肩上がりを前提にしたインクリメンタリズム,日本語になおすと「増分主義」によって制度が作られてきた。これは,新しく増えた所得の分配だけを決めればよく,過去の配分は考えなくていいという仕組みである。そして「行政の可能性は無限である」という考え方,つまり「満足化の追求」であった。
これからはディクリメンタリズム(減分主義)という考え方を採る必要がある。行政には限界があるということを市民も共有する必要がある。いままで市役所がやっていたことを地域でやることが可能になれば,地域の限界ではなくなる。これが,行政・企業・市民で一緒にやっていくパートナーシップということである。
これまでのパートナーシップは,市役所は指示する人,市民は作業する人といった概念となっている。本当のパートナーシップというのは,「共に考え」,「共に行動する」ということである。これによって,地域の評価に基づくブランド形成ということが可能となる。
社会のネットワーク
最後に人や組織の情報を交換する縦型ネットワークと横型ネットワークの話である。今までの行政は縦型ネットワークで,問題解決には優れているが,非常に大きな欠点がある。問題抽出が下手であるということ。問題が与えられれば解決が出来るが,問題を自分では発見しづらい。
横型ネットワークというのは住民,企業,行政が水平的にネットワークを組むことで,どこに課題があるかというのが発見しやすい。しかし,この横型ネットワークにも限界がある。指摘される問題点が枝葉末節から重要なものまで多岐にわたり,問題解決に至らないことがある。横型ネットワークによって問題抽出し,縦型ネットワークの問題解決機能によって解決してゆくという組み合わせが絶対に必要なのである。
これから都市交通などいろいろな問題が議論されるわけだが,どういうところに問題がありその問題に対してどういうように対応していくのかということを考えるときには,財政問題に限らず横型ネットワークとの上手な連携が不可欠の要素だということである。

札幌市営地下鉄の問題点
高見大介(LRTさっぽろ)
建設資金の調達
現在札幌市営地下鉄は48キロの路線があり,これを作るのに7千億円の建設費をかけてきた。最近作ったものでも1キロあたり170億円の巨額の投資が行われている。どの様にして建設費を調達してくるのかというと,今の仕組みでは,札幌市の補助と出資で半分,国庫補助4分の1,残りの4分の1が借入金(企業債)である。
しかし,国及び一般会計補助金は,建設時に充当されず,10年間の分割交付となっている。従って,建設時には8割を借入金で賄うことになる。
借入先は,ほとんどが財政投融資資金,簡保資金,公営企業金融公庫など,政府系の金融機関である。この借入金は20年〜30年の長期貸付で,金利が一定で,借り換えが出来ない。このため,金利の上昇期では借り手に有利であるが,金利が下降期では借り手は固定の高金利で返済していかなければならない。
地下鉄の収支
昨年度の地下鉄の収支状況は,本業ベースでは実は黒字である。営業収益396億円に対して支出371億円差し引き25億円の黒字である。俗に,走れば走るほど赤字を生む地下鉄という言い方を聞くが,実はそうではないようである。
ところが借入金の利息が大変重い。昨年度の場合204億円の利息を支払ったため,国と市から出ている運営補助金22億円を差し引いても155億円の赤字となっている。昨年度末時点で,地下鉄は4,882億円の借金を抱えている。この平均金利は4%で,一番高い金利のものが8%という信じがたいものもある。最近5年間の収支では,営業収益でほぼ採算ラインであるが,支払利息の分だけ赤字になっている。
公表されている資料に基づいてバランスシートにまとめてみると,地下鉄の総資産は4,387億円。これが地下鉄の財産の総額である。しかし,この資産総額を超えるだけの借金がある。つまり資産より負債が多いという事実上の債務超過状態にある。
それから4,277億円のいわゆる累積赤字というのがある。また,借入金の種類でいうと,特例債・緩和債というものがある。前者は利息を払うために発行した借金証書,後者は毎年の資金不足の穴埋めするために発行した借金証書である。まさに借金に借金を重ねているというのが今の状況である。
地下鉄の今後
地下鉄が今後どうなっていくのか,今日の後半の議論では分からないが,札幌市としては「交通事業改革プラン」という公式見解を読むと,「地下鉄は市営で維持するが,あるべき姿は今後検討する」,「借金の問題,特に借り換えが出来ないという制度の改善を国に求めて行く」,「一般会計から適切な支援を行う」ということになっている。

札幌市の財政と交通
吉田 博(札幌市職員)
自治体財政を取り巻く構造として,環境問題や少子化など様々な変革の波があり,これまでの延長線上で考えることはできない。新しい価値観を打ち立て,その中で行動規範が定まって理念になり,その理念から新しい制度ができるというような循環が必要である。
上田市政では市民自治という言い方をしているが,いわゆる協働型社会のイメージである。行政は,まちづくりの構成員として企業・市民・NPOの
方々と共にその構成員としての役割を担っていくことが必要になって来る。
札幌市の財政状況
札幌市は地方交付税の比率が高く,税収も伸びないことから,財政基盤の脆弱化,財政指標の悪化,財政調整基金の減少という非常に厳しい状況になっている。平成14年度の歳入で構成比を見ると,市税は32%しかなく,残りは地方交付税15.4%をはじめとする依存財源である。これまでの市債の残高は1兆円で,税収が2,800億で,年間税収の4年分の借金残高があるということになる。急激に増えたのが平成6年からで,これは景気対策に伴う公共事業の執行のため借金を重ねた結果である。
近い将来,トリプルピークと呼ばれる,公共施設の更新,退職金の増大,市債償還の増大が同時に進行する。そのうえ,地下鉄や国保の財政悪化が重なってくる。トリプルピークは平成26年度が頂点になる。退職金は平成21年度,公共施設は第一の山が平成23年となる。財政状況は今から5年から10年後に相当厳しい状態になる。
これまの事業による札幌市の資産は,約4兆8,504億円である。これから自治体はどの様に財政運営を行えばいいか。自治体は民間企業と違って収益を生む事業を行うわけではない。その中で本当に効果的な事業が行われているのかを検証してゆく必要がある。
行政がサービスをして住民がを受益するというのではなく,地域住民も財政の一翼を担ってゆくということを考えていかなければならない。これまで公共サービスは行政が担って来たが,企業や市民がその能力と責任に応じて行っていく必要がある。
バリューフォーマネー
自治体の財政は効率化によって赤字を出さなければいいのではなく,今後は,行政サービスを行って,それに見合う価値を生み出すというバリューフォーマネーの考え方が必要になってくる。効率的に行うことは大事だが,効率性だけで自治体の行政運営が行われているわけではない。これからは,環境,健康,安らぎ,潤いなどという定性的で計測しづらいものも考慮していかなければならない。
PPP(Public-Private-Partnerships)
財政のパラダイム転換,協働型社会,パートナーシップが進展していく中で,自治体の財政には具体的にどんな変革が必要か,どの様な行政サービスのあり方が望ましいかを考えると,その具体例としてPPPがその候補となる。これは,今まで行政が担っていた業務を可能な限り民間に移管し,行政と適切に役割分担を行い,公民協調による公共サービスを推進するものである。交通を考える場合でも,また一般会計の財政を考える場合でも非常に重要な概念になってくる。

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