都心の交通連続ミニフォーラム第6回
「トランジットモール」報告書
主催:LRTさっぽろ

10月6日(月) 18:30〜20:30 ホテルポールスター札幌(北4西6)

 今回のミニフォーラムでは,各界から3人のパネラーをお招きし、都心の駅前通を対象にトランジットモールがどのような考え方のもとにあり、どのような変化やどのようなことが必要かを語りあいました。また、終盤には会場のテーブル毎に意見や質問等を出しあいました。


■「トランジットモールって何?」
望月さんから考え方や発想のご紹介
 "トランジットモールという表現は、その先進地のドイツやフランスにはなく、歩行者専用地区に一部公共交通が走る「混合交通」の一部分である"ということをはじめ、次のような考え方が示された。
☆ トランジットモールや混合交通は"車が王様の価値観から転換した社会で成立"しますが、日本はヨーロッパの70年代の状態です。歩行者優先地区の議論なしでは始まらないと思う。
☆ 歩行者が優先される歩車共存とは、"車も通っていいですよ、ただし(車には制約)"という関係。その実現例として「ゾーン30」や「ボンネルフ」のような人が優先される取り組みが進んでいる。
☆ 歩行者優先地区では、歩行者専用をはじめ、歩行者+バス、バス+タクシー+二輪が混合する専用レーン(これはパリ)もあり、すべてが歩行者専用ではない。
☆ 歩行者優先でも、ちょっと乗りたい時の移動手段(歩行を支援する道具)は必要。それは平面で歩行と同じレベルで乗れると機能的です。

 <パネルディスカッション>

 望月真一さん (株)アトリエUDI都市設計研究所代表
●駅前通の道路空間・・・・・
・ 歩道が実質片側5mの幅は、ただ働きにくる・歩くだけならそれでもいい。100万都市の活性化を目指し、シンボル的に多くの人が文化や出会いの空間としていくためには、歩道を広げたり人が移動する手段としてのバスなりLRTも必要ではないかと思う。
・ 結局は、車をどう扱っていくかを決断することが重要。(札幌は)道路率が高いので、やろうと思えばいくらでも可能ではないだろうか。(道路率に対して歩道率は高いのでしょうか?との疑問も)
・ また、駅を降りて多くの人が空間を享受する駅前通では、トランジットモールが望ましいと思う。駅のポテンシャルを高めた広くすばらしい駅前広場を作ったのだから、そこからすーっと駅前通につながると、札幌の人も札幌に来た人も良いなと思うのではないのでは?。
・ しかし、現在の駅前通は、両側が車道という川で分断された状態で、これでは道路の片側分しか機能していない。(他都市の事例から)バスと電車が通るようにした場合、道路の向かいまでの距離は、一般の車が通っていた時の半分程に感じるようになる。
●都市と交通と環境・・・・
・ 車ほど便利で個人の生活を豊かに支える道具はないですが、一定の場所ではけじめをつける動きがヨーロッパはもとよりアメリカでも一般的になり、日本もそろそろ変わるべきだと思う。
・ 車と公共交通をミックスする事例として、公共交通で都心に人が集まってくる装置を作る必要がある。その際に都心居住を忘れてはならず"都心に住んでも車所有は自由ですよ、でも車は遅かったり混んでいても我慢しましょう、公共交通も便利だし"というように、P&Rも含めたバランスが必要。
・ 交通に関してフランスと日本が違う点は行政責任です。LRTを推進して51%の得票率で当選したストラスブール市長は、多少の摩擦が生じても良いモノを早く見せようということで進めて成功した。
・ トランジットモール導入に最も反対していた商店街が、今や最も売れる商店街になったのも皮肉ですが、その変化が一般の人にはわからない不安もある。そこで、社会として決断するまでの努力も必要ですが、ある程度の合意が取れた時点で推進する人がいないと先には進めません。
・ ストラスブールでは4年半で一気にシステムを完成させたが、日本の場合まだ10年も20年もかかるのか?ということになってしまう。(それで良いのですか?という問いかけ)
●交通とコスト・・・・・
・ 公共交通政策は、都市政策の中でも最重点のひとつだが、日本にあるのは"大量輸送"で"公共交通"ではない。運賃だけで市民が満足できるサービスは不可能。
・ フランスでは運賃収入と交通税と一般財源が各1/3程度で、運賃で半分以上稼ぐとサービスレベルを上げなさいと言われる。日本でも仕組みを変えてやることは可能では?。


鈴木正利さん (株)コスモメディア常務取締役(月刊「poroco」編集・発行)
●人が集まる通り・・・・・
・ 札幌のまちが車中心のつくりであることを実感。駅前通などは、まさに車だけのための存在。
・ 札幌の都心には雑誌で紹介されるような"通り"がない。駅前通でいえば、取り立てて紹介するようなお店は、ホテルを除けばベネトンくらい。紹介するときには通りではなく「札幌駅周辺」。
・ 駅前通を歩いて楽しめる空間に変えるとき、すぐに対応できそうなのは南1条〜南4条の区間だけ。
北1条〜札幌駅になると、「見られる」という観点でビルなどがつくられていない。
・ 電車を走らせるだけでなく、ビルオーナーや店をやろうとする人たちが駅前通に目を向けるようにしなければならない。どこか一箇所だけでなく、そこに暮らす人々や市民が行動を起こさなければならない。
・ 札幌はチャレンジする人が多い。最近は、東京で流行ったものに多少の味付けをして、札幌ならではの店づくりをする人たちが増えている。こういう人たちを呼び集めるような仕掛けはないだろうか?
・ 仮にトランジットモールができると、拠点から拠点を地下鉄で移動をしていた人々が地上に出てきて、通りを楽しみながら動こうとする。人々が路面電車に乗って移動するようになれば、通り沿いが「見られる」ことを意識し始める。そこにビジネスチャンスを見つけて何かを起こそうとする人たちが出てくる。ただし、場所代が高くなると郊外へ出てしまうので、その点を考慮しつつ駅前通が線でつながると、チャレンジする人が出てきて、楽しめる空間になると思う。
●環境、女性の視点・・・・・
・ 女性の視点からまちを考えるなら"音"の問題がある。札幌のまちなかの音はおしゃれじゃない。街頭放送が多くて耳障り。のんびり歩く雰囲気にならない。逆に、人で賑わうまちなかの雑踏の音は心地よい。つくられた広告的な音を止めれば、人はもっと集まるのではないか?
・ もっと"無駄な空間"が必要。昔のつくりの建物はどれも天井が低い。お店にとっては天井の高いビルが一番贅沢なのかも。テナントビルでは、空きスペースは全部売り場に使おうとする。既存ビルも無駄な空間・余裕あるつくりをするようになれば、人はもっと集まるのではないか?
●車、自転車・・・・・・・・・
・ ビジネスでとらえると、札幌都心で車は本当に必要か?車があまりにも身近にあるので、近距離でも車を使ってしまう。一方で、都心への通勤に自転車を利用している人は多い。まちなかが走りづらいという問題はあるものの、結構遠くからでも意外と短時間で会社に着く。下手に地下鉄に乗るよりも、自転車のほうが早い場合もある。
・ 車を排除するのではなく、使う機会を減らすことで車中心のまちを変えることもできる。自転車でも走りやすい環境や車を置いてもいい環境などから考え始め、それをきっかけとして、まちづくりを皆で真剣に考えることで、駅前通も札幌のまちも何とかなるのではないか?
・ トランジットモールのような通りであれば、人も自転車も電車も車も同じところを共有できる。そんな風になれば、駅前通も札幌のまちももっと楽に変わるような気がする。


太田清澄さん (社)北海道まちづくり促進協会専務理事
●駅前通の性格「都市軸」・・・・・
・ 札幌は街としてブランドとなり得る。それにぜひ必要なのは「サッポロ『物語』」。北3条通と札幌駅から中島公園に向かう駅前通が札幌の歴史性から見ても2本の軸であり、札幌が将来にわたり市民が誇りを持てる街であり続けるかどうかは、ここにストーリーを描けるかどうかにかかっている。
・ 米国のシカゴの「北ミシガン通」は「魅惑の1マイル」と名づけられ、何でもない大通りを戦略的に人が呼べる魅力ある通りにすることに成功した。
札幌駅から中島公園までもちょうど1マイルだ。
・ 駅前通地下通路建設は、良いか悪いかは別として、そこに新しい物語をつくる良い契機として捉えてみたらどうか。
●「物語」とトランジットモール・・・・・
・ 駅前通の街路空間・都市空間を変えるということが大事。街路の両側になりわいを持たせた上に歴史性を踏まえた景観に変えていく。
・ 街路空間における移動の手段として、相互に代替システムとなり得る複数の手段は絶対に必要。地下通路でもトランジットモールでも、そのシステム構築にサッポロの意思、主張を反映することが「物語」の重要な部分となり得る。
●環境・バリアフリー・・・・・
・ 自家用車率を下げ、電気バス、LRTなどを導入すれば間違いなくNOx濃度が下がるのはあたりまえの話。ストラスブールは、LRTを導入することで、環境に配慮した街であるという"意思の表示"をした。それを売り物にしたお陰で、豊かな生活をもとめて人が集まるようになった。
・ バリアフリーといえば、例えば、お年寄りやハンディキャップのある人が誰でも利用可能な、簡単な電動車椅子のような乗り捨て自由の乗り物・タウンモビリティーが今後導入されることが予想されるが、それと衝突したらつぶしてしまうような危険なものは今後否定されていくだろう。
●交通とコスト・・・・・
・ あくまでも、サッポロをどういう街にしたいのか(物語)というなかで、地下通路、トランジットモールなど、代替性の多様性、バランス感覚から考えていくべき。
・ モールができた時、商いは間違いなくアップするので反対に対しては根気よく説明・説得していくべきだが、例えば直接影響を受ける駐車場ビル経営者などもおり、更に議論を詰めていかなければ実現しない。例えばファンドを積んだり税金を徴収したりして、利害が直接絡む事業者に補てんするといったことも、コストの意味から言えば真剣に議論していく必要がある。
・ トランジットモールは交通政策と都市政策を一緒に考えるTOD(Transit Oriented Development)のきっかけになるが、両者の数字をつみあげていっても平行線の隘路を抜けられない。まず戦略ありきだ。
・ 米国・ミネアポリスにできた「ニコレットモール」は最初のトランジットモールとして有名だが、近隣に大規模なショッピングセンターができたために、見事に寂れてしまった。しかもそのショッピングセンターも、有名な「モール・オブ・アメリカ」(全米最大の超大型複合ショッピングモール)ができた以降は疲弊してしまうという、まさに「パワーゲーム」の状態になっている。トランジットモールも絶対ではなく、そこに「ストーリー(物語)」がなければ単なる手段にすぎない。



参加者の議論の様子(ワークショップ)

  

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